今週のアクタージュは後悔しない人生を!でした
先週はまさかのコモドドラゴン引きで終わったアクタージュ。
今回はそのコモドドラゴンの余韻を残しながら、前説ページでこれまでの夜凪ダサコーデを特集していました(※プロフィールによると本人はカワイイと思っているようです)。
マンガのキャラは基本的に「着替えない」ものですが、『アクタージュ』はあくまでもリアルな世界をテーマとした現代劇。主人公たちの服装を決めるのは、マンガ家さんにとってなかなか大変なことでしょう。
Tシャツデザインを毎回変えていると言えば、みずしなたかゆきの『いとしのムーコ』なんてのが有名ですが、多くの作家さんはファッション雑誌を大いに参考にしているとか。
さて本題。※20.1.7 引用を適正な量にて内容も若干修正しました
(以下ネタバレあり)
scene.66 アリサの条件
今回は扉絵なしで、そのままストーリーに突入。
冒頭は、大手プロダクション スターズのトレーニングルーム?にて当たり前のようにトレーニングする、スターズの天使 百城千世子と、社長の息子でイケメン キラキラ王子 星アキラの会話から始まります。
基本的に少年マンガ(特にジャンプ)は、『スラムダンク』などに代表されるように「弱小」が、努力と友情で「強豪」に勝利していくもんなので、このマンガではスターズが、海南大付属のような「強豪」のポジションなんでしょう。Wキャストの舞台が、なんと演出家まで別々ということを話しながら、当たり前のようにトレーニングして、出番に備える。それも、汗一つかかずに。
こういうことを描きながら、強豪の強さを描けている、というのが面白い作品の特徴で、地味だけどとても大事なシーンかなと私は思います。
さて、現状、百城千世子や夜凪景に置いてけぼりを喰らっているアキラくん。でも、なんか今までと顔つきが違いますね。
これはきっと、今までの、「坊ちゃん感」のあるキャラクターから、脱皮する兆候なのでしょう。
もう、夜凪の演技の意味がわからず下手くそ扱いされたとか、百城千世子が出演するとわかったら出演する予定だったイベントに出演しなくてもよくなったという、咬ませ犬感たっぷりだった男の顔ではありません。
あくまでも千世子と対等の存在になりつつあるのだということを予感させる描写です。
そしてそんなアキラくん。
母親には才能はなくても幸せになればいい、みたいな感じで枠の中で決めつけられてしまいがちな自分を変えたいと、自分探しの旅ならぬ、武者修行の旅に(おそらく)出るため空港へ。見送るのは千世子だけ。
少年の目で夜凪の(演劇部の)作品を見て、自分の可能性をまだまだ伸ばせるんだと信じて、単なる「努力」じゃなくて、もう一歩、殻を破るために行動を移します。そう、それが、武者修行(おそらく)。
同世代として、千世子が抱える悩み、不安を感じていたのでしょう。
「大丈夫だよ 君は誰にも負けはしない」
と、夜凪景の才能を一番目の当たりにしているくせに、千世子の努力を知っているだけに、千世子が負けるはずがないとサラッと言ってしまう星アキラ。さすがイケメン俳優らしく、イケメンなことを言ってくれます。
モテない男は「評価」しますが、モテる男は「応援」してくれるんです。
それを素直に喜んで受け取る千世子ではありませんが、見透かされた想いに、反応が少し遅れます。こういった所も芸が細かくて好きです。この辺、演劇の素養がなくマンガを描いている人はすっ飛ばしがちなので、こういったところが大人の鑑賞にも耐えうるマンガの秘密ですね。
そして、あえて、「アキラちゃん」と、下に見るようないい方をするあたり、とてもプライドが高い女性であることを表現しながら、「ちゃんはやめてくれ」と、次に来る時は本物の男になっていることを予見させる背中を見せるアキラくん。
次に登場する時は「アキラちゃん」でも「アキラくん」でもなく、「アキラ」と呼ばれるのでしょうか??
それにしても、星アキラの海外渡航について、事務所のみんなが「遅れてきた反抗期」と言っているくらいだから、おそらく星アリサもこのことは了承済みだったのでしょうが、期間も、何年とかじゃありません。夜凪と千世子の公園までには帰るんだと。
・・・果たしてそんな短期間で大きく変われるのか??
そんな疑問も湧きますが、渡辺直美もたった3ヶ月の留学だったにもかかわらず、世界的な大ブレイクをすることになったわけで。
どうなるかわからないけど、強い決意で旅立ったアキラを見送った千世子は、それを予見させるようなことを言って後を去ります。
「…男子三日会わざれば刮目してみよ か」
と、若い女の子がとてもいいそうにない言葉を放つ千世子さん。
男だらけの中国群像劇『三国志』の中で生まれた故事ですが、そんなことまで知っている千世子の博識さが光ります・・・純粋に作者の趣味だと思うけど・・・まぁ、母親の元、恵まれた環境で、本人なりに努力してきたアキラくんが、自分の力で荒波に揉まれて、公演までに帰って来るんだよ、という伏線を作ります。
さて、その百城千世子。冒頭でアキラに言っていた「駄々」を回想。
私は夜凪景に負けたくない。だから、悪魔と手を結んだと言われても、天知といううさんくさいプロデューサーの誘いに乗って、夜凪とのW主演でコテンパンに勝ってやるわよと意気込む千世子。
「“スターズが捨てた女(=夜凪)”と“スターズを捨てた男(=王賀美)”に“スターズの天使(=千世子)”が負ける」
事務所の心配よりも、千世子の役者生命を心配する星アリサ。
スターズの社長、星アリサは、優しい人です。
自分のように役者として再起不能にならないよう、役者を「守って」来ました。
だからこそ、もし万が一、千世子が夜凪に負けたりなんかしたら、千世子が・・・
でも、千世子はそれを覚悟してでも、勝負をしたい、白黒つけたいのだと強く主張する。だって、天使でいられるのはあと2年くらい。だったら、今燃え尽きたって構わない。むしろ、それくらいで燃え尽きるようじゃ、この先も知れてるわ!
女優さんは若い頃は男勝りのおてんばだった人が多いそうですが、強い気持ちがないとなかなか主演女優というのは務まらないのかも知れません。千世子も同様に、「私は負けない」という強い気持ちで、この舞台に臨みます。
仕方なくうなづく星アリサが出した条件が・・・
夜凪を見いだし、自分の事務所の(恐らく唯一の)所属女優にし、世界を興奮させたMVを撮影して世間を騒がしたその人、黒山墨字監督を、千世子側の舞台の演出家(映画でいう監督)として指定してきたのです。
星アリサ、なかなかの策士です。
伊達に一女優から大手プロダクションを築き上げてきたワケではありません。
夜凪のことをよく知り、夜凪とタッグを組ませて世界を驚かせた黒山・・・だったら、その黒山をこっちに引き入れてしまえば、夜凪の輝きも少しは失せるだろうと。「あの選手を取られると困るから、うちで使う予定はないけど先に取っちまえ」という昔のプロ野球のトレードみたいな感じです。
もちろん、星アリサは、誰よりも黒山の能力を高く買っているというのもあるでしょう。
いくら自分が推したい役者(夜凪)が相手にいるからといって、自分の作品(千世子側)のクオリティを絶対に下げることがない、プロとしての信頼。でなくば、千世子がつぶれてしまうかもしれないこの、「演出家の指定」はリスキーすぎます。
演劇の稽古って何すりゃいいんだっけ? 的な黒山もどうかと思いますが、ちゃんと冷静に「読み合わせだろ?」と仕切る阿良也。変人かと思っていましたが、黒山に比べたらかなり常識的に見えてきました。先週あれだけバチバチしていた千世子とも(吉野家効果か)すっかり打ち解けているようですし・・・さすがプロです。
それにしても、スターズ側の演出家が黒山・・・展開として非常に面白い。
「新しい百城千世子」「新しい明神阿良也」それだけでなく、夜凪と一緒にスターズのオーディションを受け、夜凪の方が圧倒的な演技力を見せたのに対し、星アリサが「あの子の演技は危険すぎる」と夜凪を不採用にしたことで、見事スターズに採用された和歌月千(わかつきせん)もいます。
これまた夜凪と同世代の女優が、この舞台でどんな役割を見せるのか?
単に解説要員としてではなく、夜凪の引き立て役になった女優が、今度は千世子の引き立て役として、輝くのではないか?? そうすることで千世子の魅力も夜凪の魅力もさらに引き立てられいくのではないかなと。
スターズは、努力し続ける役者のいるプロダクション。才能じゃない。だから、和歌月だって輝けるんだ・・・・という展開になるのでしょう。大手の力は偉大です。SMAPだって、最初は「木村拓哉と中居正広しかいない」「あとは事務所のゴリ押し」なんて言われましたが、いつのまにか国民的スターになって、ジャニーズと縁を切って独立してそれなりにやって言ってるわけです。
「スターズには入れたんだから自信を持てよ和歌月」というエピソードも絶対一度はあるはずだと思う私でした。
台本の表紙→台本の内容→台本の表紙
という粋な場面展開をして、今度は夜凪のターン。
夜凪側は、『デスアイランド』で登場した、うるさい売れない俳優 烏山武光(からすやまたけみつ)が参加します。
相変わらず遠慮なくズケズケと入ってきますが、それがコミュ障の夜凪とよくマッチして気が合うようです。
コミュ障は、話しかけるのが苦手なので、その気持ちが良くわからんぐらいグイグイ来る人が意外と平気だったりします。黒山側にマネージャー的な仕事もしていた柊雪(ひいらぎ ゆき)も行っちゃってるので、今後、武光くんが色々と夜凪をリードしていくのでしょう、きっと。
そして武光は、主演も明かされていないオーディションを受けた決断を、「あること」が理由だったことを告げます。
『銀河鉄道の夜』編で亡くなった、演出家の巌裕次郎の舞台に立ちたかった武光。しかし実際は、その最後の舞台には自分より若い夜凪が立ち、自分は観客席で見ているだけだった。
「だからあの時思い知った 時間は有限だと これからは どんなチャンスも逃さない」
「役者」として、立てる舞台は迷わず立つ。それが大きな舞台ならなおさらだ。それが役者だ!
武光は強い決意を持ってこの舞台に臨みます。
その決意の表れが、なぜか2時間前に行くということ。
いや、社会人として、2時間前に行ったら先方が迷惑だろう?とかそういうの関係ないんです。二人ともKYなんです。若いんです。
そして突撃した先にいたのは・・・
昨夜から待ってた王賀美!!!
純粋に「時差ボケじゃない?」というツッコミもなくはないですが、そこはいったんスルーして、この、どいつもこいつも非常識な感じ、いかにも「主人公側」って感じですよね。
ちゃんとした礼儀や常識をわきまえている、千世子(スターズ)側とはエラい違いです。まさに、異端vs王道。湘北vs海南みたいな。スターズ側の演出家は非常識なので、こちら側の演出家は逆に、オーソドックスな地味な人、ってな感じかな??
物語の演出上「対比」というのはとても大事なので、この、『ダブルキャスト』編も盛り上がること間違いなしですね。
しかし、一つ気になるのが・・・
なぜ、その舞台が「人妻仙女」である『羅刹女』なんでしょう???
夜凪も千世子も子どもどころか結婚も恋愛もロクにしてないのに・・・・何かしら意味があるんだと思いますが、今のところ不明です。
待てよ。この感じだと牛魔王が武光??
(出典:週刊少年ジャンプ2019年26号『アクタージュ』scene66.アリサの条件)
かわいい顔の星アキラが表紙です(本編とは関係ないですが)