結婚するなら、バツイチ女(1)
私の妻は、バツイチである。
本人が公言していないので知らない人も多いし、なんなら私も、直接本人から言われたわけではなく、たまたま知っている人が妻の元同僚だったこともあって、「結婚したハズだけど」という事実を教えられたから知ったくらいだ。
個人的には「バツあり」はどっちでもいいことだが、そうではない人も世の中にはいる。
「バツあり」の「バツ」とは?
今は昔と違って、離婚する人も増えた。
昔はアメリカで、2組に1組が離婚しているなんてよく言ったものだけど、今の日本も、3組に1組が離婚しているそうだ(厚生労働省調べ)。もっともこれは統計上の話で、小室哲哉のように何回も結婚と離婚をくりかえしている人もいるから、実際に、そんな割合で存在しているというわけではないだろう。
でも、以前よりははるかに「バツあり」の人が増えたのは間違いない。
ただ、だからといって、「バツイチ」ということに対して、いいイメージを持たない人がいないわけではない。周りにそういう人が少なければ少ないほど、その傾向が強くなる。たとえば旧家の嫁だったらバツイチはNGとかもそうだ。
また、この「バツ」という言葉もイメージがよくない。
なぜ「バツ(×)」となるかというと、明石家さんまが大竹しのぶとの離婚会見の時に×ポーズをしたからという説もあるが、離婚すると戸籍の原本に大きな×をつけられたことから来ているようだ(苗字の家から抜けるから。だから妻に×がつくことがほとんどだった)。今は電子化されているのでそんなことはないが、「家族」を基準にする日本らしい考え方といえるだろう。
そんなイメージが悪い言葉はやめようと、主に女性誌で「バツイチ」というネガティブな言葉を使わないようにする運動もあったようだが、まったく定着せずに今に至っている。
本気ならバツイチでも気にしない
ただその分、バツイチということばのネガティブなイメージそのものは弱くなくなり、「実はバツイチなんだよね~」と笑って話せるようにはなってきたと思うし、男の方も男の方で、以前ほどバツイチ女に対してネガティブなイメージを持つ人は少なくなったように思う。
でもそれでも、バツがあることに対してのネガティブさが完全になくなったわけではない。特に「バツイチ女」をネガティブに捉える人はまだまだ多い。
妻がバツイチであることをあまり他の人に言わないのは、本人的には別に話してもいいのだが、取り立てて話すことでもないし、他人、特に異性である男に話すとあれこれ聞かれても面倒だから言わないようにしてる、というのが理由だ。
それくらい、一般的にバツイチは、「なんで?」と聞かれてしまうようである。
バツのない人からすると、バツがあることが気になって聞きたくなるという野次馬根性が出てきてしまうこともあるのだろう。
ただ、根本的に、男だろうが女だろうが、本気になってしまえばバツイチだろうが気にしないものである。
でもそれは、「本気になれば」という条件付きだ。
その点で言えば、普通の恋愛と違って「ハードルが高い」とも言えるが、逆に言えば、「バツイチ」を理由にして、「結婚する気がない」という予防線を張ることもできるし、逆にそのハードルを乗り越えて「真剣なお付き合い」をすることもできる。
この辺は女の方が柔軟で、男はそこまで柔軟にはなりきれていない人が多いように思う。
バツイチ女かどうかを気にする男たち
「女のバツイチ」に対してよくないイメージを浮かべる男は、少なくはない。
特に、若い内はその傾向が強い。平気で「バツイチはマイナスポイント」なんて言ったりすることもある。
なぜそうなるか?
それは基本的に男というのは、言い方は悪いが、手アカのついた女はイヤという発想、処女性信仰があるからだろう。
男は女が妊娠しても本当に自分の子かわからないという可能性もあるだけに、猜疑心を持つことがある。だから、生理的に、他の男が絡んでいない女の方がよく見える・・・という説だ。
まぁ、そんなのはイメージでしかないのではあるが、それでもやっぱり「清純そう」な格好をしていた方が、就職面接でも、合コンでも、婚活パーティーでも、ウケがいい。
中には、「そういうのが嫌い」という男もいるが、そうやってアピールする割に、実際はそういう女を選ぶ男が多かったりするので、あまり説得力がない。
そのロジックからすると、「バツイチなんてとんでもない!」という人がいてもまったく不思議ではない。というか実際にいる。
それに、とにかく男は、女と違って競争が大好きだ。だから、とにかく、周りの男よりも評価されることを望む。
「こんなの初めて〜❤️」で喜ぶのは大概男だし、なんなら、女性向けの恋愛ハウツー本では、鉄板モテトークとして方々で紹介されてすらいる。
そんな生き物だからこそ、他の男の「お古」「中古」はイヤなのだと。
「そんなんじゃ、自分の株が下がる」と考える男も令和の時代になってもいる。母親が「バツイチなんてとんでもない」と言うから結婚を止める男もいる。百歩譲って他の男との経験はしててもいいけど、その中でも一番ならいいか、という男もいる(そしてそういう男ほど、たいしたことなかったりするものだが・・・女が演技してることに気づかないからね)。
・・・ここまで聞いていて、「一体何様なんだ」と思う女性が大半だと思うが、そういう男もいるということである。
そういう発想に至る男たちは、根本的に女心がまったくわかっていない。
わかっていたら、こんな考えが「一番アウト」だということがわかるハズだからだ。
なんなら、こういう男たちに限って、古風な男女観を持ち続けている。やれ、女は男についてこればいいとか、女は男に尽くすのが正解だ、とか。俺のことだけ見てればいい、と言う男も多い。
それでいて、「昼は淑女のように、夜は娼婦のように」なってほしいと願っていたりする。つまり、理想の女性を追いかけたいタイプということだ。
比べられたくない男たち
これが二〇代なら、まだわかる。理想はいくらでも言えるから。
でも、四〇代になってもそういうことを言う男もいる。
なんなら自分だってバツイチなのに、あくまでも再婚相手は「初婚がいい」という男もいる。自分色に染まる相手の方が、自分のプライドが守れるように思うからだろう。
バツイチ女は、自分が他の男と比べられそうな気がして怖いのだ。
「前の男の方が収入が高かったかも?」
「前の男の方のことを忘れられないんじゃないか?」
「前の男の方が上手かったんじゃないか?」
などなど。直接言わないにしても、悶々と思い続けることはあるだろう。
これは何もバツイチに限ったことではなく、恋愛でもあることである。
ただ、女からすると、比べるも何もない。
これは、男と女の違いでもあるが、女の恋愛は「上書き保存」だから、昔の男はどんどん新しい男で塗りつぶされていくものだが、男は「別名保存」で女を見る。
だから男は、いつまでも女が自分のことを好きだと勘違いして、平気で元カノに彼氏ヅラして、「ヤレるかも?」と思って電話をしてくるし、格好つけて、口では女の過去を「気にしない」と言いつつ、本心ではもの凄く気にする。
その結果、バツイチ女を「なんとなくイヤ」と思う男が生まれる。
お互いバツイチならそこまで気にしないが、自分はバツがついてなかったら・・・女はあまり相手の印象が変わらないが、男はまったく相手の印象が変わる。
「俺以外の男とラブラブだったなんて信じられない!」
と、まるで少女のような「ピュア」な男もいる。もちろん、オッサンでも。
逆に、自分もバツイチだから、バツイチ女がいい、という男もいる。相手にも傷がついていれば、自分のコンプレックスを感じなくて済むからだ。
でも、私は、こういう人にこそ、バツイチ女の魅力をわかってほしいと思う。
というか、結婚した方がいいと思う。