今週のアクタージュは市子さんの涙ボクロが気になりました
こんにちは、出版準備やらなんやらで猛烈に時間に追われている田中聖斗です。
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今週のアクタージュもギリギリ日曜日の更新ということでいつもの感じですがよろしくお願いします。
※20.1.7 引用を適正な量にて内容も若干修正しました
(以下ネタバレ)
scene.67 極上の肉
前回、映画の撮影で知り合った武光と共に意気揚々と二時間前に顔合わせ場所に来た夜凪。
しかしその場にいたのは、待ちきれなくて昨夜から来ていたハリウッド俳優 王賀美陸。
やる気ビンビンの彼を目の前にスイッチが入り、読み合わせなのに机の上に立って扇子まで用意して「羅刹女」になりきる夜凪。
羅刹女は天の風の神。
とにかく強く、偉そうじゃなきゃいわんとばかりの夜凪ですが、なにせ相手は若くしてハリウッドで成功した相手です。そんな夜凪の態度にたじろぐこともなく、「セリフを覚えてないがいいよな?」と語る王賀美。
昨日の夜から来ていたくせに、セリフを覚えていないって何してたんだオマエは!とも思いましたが、それが許されるのが超大物。どうも、役作りは相手がいるシチュエーションじゃないと出来ないタイプみたいです。
学校だったら間違いなく浮いている存在でしょう。
まぁ、でなかったら大手事務所を辞めてハリウッドなどに行ったりはしないでしょうが。
さて、勢いよく入ってきたはいいものの「無名はすっこんでろ」と言わんばかりに見学を申しつけられた武光。夜凪の成長ぶりを改めて感じます。天才って凄いよね、と。
それにしても、作者の絵がどんどんよくなっていきますね。
最初は夜凪の頭身が短めでしたが、女優さんらしく長い足、小さい顔になりましたし、アップでの演技の表情もとても魅力的です。少年誌の女子は、ワンピースのナミのようなボッキュッボンというのが多く、スレンダーな子は割と少数派ですが、アクタージュはラブコメ的な作品ではないからそれもいいでしょう。
そういったところ硬派なのに人気があるのが、いかに作品の内容が優れているかということですね。
それが計算なのかそれとも単にそういう女性キャラの体を描くのが苦手だからかはわかりませんが、色気のない尻の描き方なので、今後、フェロモンのある役を演じるのに苦労しそうです。でも、そういう発展途上な感じが次のワクワクにつながっていくのでしょう。だってまだ高校生だし。
そして、脇役として登場した武光くん。
ポジション的にはいつも演技の解説をする雪ちゃんがいないので、その代わりに、演技のスゴさを解説する役割をちゃんと全うします。
「何を演じても王賀美陸」
完全に、「何を演じてもキムタク」な感じですが、たしかに、主演俳優を務めるスターは、演技のうまさよりも、圧倒的存在感を見せることで演技を超越するかのような描写です。
その存在感に、羅刹女としての怒りの感情はどこへやら、一高校生に戻ってシュンとする夜凪。
何が理由かはわからないけれども、とにかく、そう、存在感が違うのです。
孫悟空といえば猿ですから、そんなにデカくない、チャカチャカした人が演じた方がそれっぽい気もするのですが、王賀美の、何ら悪びれもしない堂々とした態度で語る孫悟空としてのセリフは、「仏様」にすら逆らった不遜な輩、孫悟空を見事に体現しています。
上手いキャスティングです。
というか、もうこれって夜凪サイドの勝ちじゃね?
という気もしましたが、そんなスーパーサイヤ人がいても困ったことが起きるのが演劇です。
王賀美の存在感が強すぎて、敵役として、作品の主人公として目立たなきゃいけない夜凪が、完全に食われてしまいました。
いいですね、そういう形の「強敵」が出てくるのが。
そしてその強敵の強さを解説する人たちがまた登場します。
大河ドラマにも出演していた、白石宗(38…に見えないけど)と、セクシーな泣きボクロが人気が出そうな朝野市子さん(20)。
王賀美の圧倒的な存在感を、「芝居が上手いというより 芝居が良い」と表現します。
そう、芝居が上手いだけなら他にだっている。でも、主演俳優はそれだけじゃダメだ。華がないと!
そしてそんな王賀美を、実績のある俳優さんはまさかのたとえで表現します。
「生まれついてのキリストのような存在」
そこまでいっちゃいますか!!
夜凪もこれまでの「天才」との出逢いで進化してきたように、進化とは困難に直面して生まれるものです。
今回はハリウッドで活躍する、圧倒的存在感のあるスター、王賀美。しかし、相手がキリスト級って、完全にラスボスじゃないですか。
あまりにも圧倒的すぎるから、経験のある俳優さんたちは「なぜそうなるか?」なんて考えないようにしているんだとか。
チートだよチート
そう思わなきゃやってられないくらい、常軌を逸した存在感を持つ役者がいて、それとどう渡り合っていくか?
それが、プロとして第一線で活躍する役者たちの想いです。
王賀美自身もそれをよく把握していて、夜凪に対して「俺を前にするとみんなそうなる」「気にすることはない」と優しく告げます。
この人はいい人なんだか悪い人なんだかよくわからないというよりも、そういうのを超越して、「王賀美陸」なんでしょうね。
この辺も細かいところですが、役者さんのことをよく観察している作者なんだなということがよくわかります。
何も知らない一般人や芸能記者は、ちょっとでもスムーズに行かないと「ギクシャクしている」とか「トラブってる」とレッテルを貼りがちですが、集団で一つの作品を作りだしていく演劇では、それぞれの「人間」としての考え方や想いもそうですが、それまでの生き方や表現といったものが様々に絡み合って、それが作品に溶け具合ながらより作品の質を高めていくものです。
だからこそ、役者たちのただの「演技にかける想い」だけではいい作品が出来ないのも事実。
クソみたいなゲス俳優でも、男を翻弄しまくる魔性の女優でも、作品が良くなればそれでいい。だからこそ、浮気とかが許されたりするわけで、他に代役がいるような人が浮気すると炎上してしまうのはそのためです。
ちょっと話がそれましたが、王賀美に食われた夜凪について、王賀美は自身の大好きなステーキで表現します。
「俺が一人皿の上にいれば舞台は成り立つ」
強烈な個性は、強烈な自信によって作られるのかもしれません。さすがにキムタクはこんなこと言いません。
そして我らが主人公 夜凪景は、王賀美にとっては「皿」だと。
「最高の皿」になれる素質があると告げる王賀美。
たしかに、最高の皿かもしれませんが、それでも皿は皿です。
王賀美はスパイスとして、夜凪をスカウトした映画監督で事務所社長の黒山墨字を考えていましたが、台本を読んでないので、こちら側の演出家にはノミネートされていないことに気づきませんでした。
黒山と新宿ガール(夜凪)だから日本に帰ってきたのになんだこれはと激おこぷんぷん丸な王賀美。
しかし、これで黙っちゃ女が廃る。
夜凪は、人としてダメダメな王賀美に負けてたまるかと、王賀美にタンカを切ります。
「黒山さんのことなんて私が忘れさせてあげるわ」
とても高校生のセリフじゃありませんが、それだけ、夜凪が「一流の役者」になったということでしょう。強い自負と、強い想い。それがなければ、役者なんて続けられません。役に食われて、共演者に食われてしまうからです。
羅刹女は、夫が逃げるように浮気するような、気の強い鬼女です。なんせ名前が「羅刹」ですからね。
ただ演技が上手いだけじゃダメ。
ただ怖いだけじゃダメ。
見る者が圧倒されるような存在感を放ちながら、夫の浮気や息子の死などやりきれない怒りと悲しみを内に秘めて暮らしながら、それを不遜な輩、孫悟空に全力でぶつけてくる存在でなければなりません。また、恋を知らないウブな女子ではなく、男を知って、男に期待したけど、結局期待できないということが実感した経験がある大人の女性を演じなければいけないのです。
これまで、年相応かそれ以下の役を演じてきた夜凪にとっては、高い高いハードルです。
というか、こんな若い子キャスティングする??
という気もしないでもないですが、それだけ、才能のかたまりということでしょう。
しかし夜凪の足は本当にフェロモンに欠けますね。女子高生っぽいといえばそうなのかもしれませんが、こんなんで「人妻」を演じられるのか若干不安です。
むしろ、弱冠二十歳にしてはスゲー冷静で、セクシーな涙ぼくろが印象的な市子さんの方が人妻っぽいです。
ただ、「チートだよチート」と言ったり、顔とコメントが合わない気がするのは私だけか?
(出典:週刊少年ジャンプ2019年27号 『アクタージュ』scene.67 極上の肉)