友情は国境も宗教も文化も超える『サトコとナダ』
Amazonのサイバーマンデーで、高額Wi-Fiルーターが安くなっていたのでポチッと押して滝汗を流してる田中聖斗です。
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今日の朝ごはんは、日本人女性とサウジのムスリム(女性は本当はムスリマ)女性との日常を描いた4コマ『サトコとナダ』。
ツイッターで4コマを掲載する「ツイ4」連載に、背景の談話を細かく追加した(マンガでね)コミックス版です。
話題になったのは結構前ですが、ついに単行本で読みました。
この作品、今年の、宝島社の「このマンガがすごい! 2018」のオンナ編第3位に選ばれたので、そのうち映像化されるんじゃ・・・・なかろうかどうだろうか?
ムスリム、イスラム教徒は、全世界の2割を占めていると言われているのですが、日本ではあまりお目にかかることもないので、「マイナー宗教」扱いだったり、自爆テロの影響で「怖い宗教」「原始的な宗教」というイメージもついていたりします。
それについて、「イスラム教って実はこういうのなんだよ!」とか「イスラム教はこんな素晴らしいんだよ!」とか語る本もあるし、最近は、東京オリンピックも近いということで、外国人観光客が増え、「ハラール」と呼ばれる、イスラム教徒に配慮した食材・料理である認証についての認知度も高くなってきましたが、まだまだ、日本の一般人とムスリムの距離は遠いもの。
だって、物理的に近いことが少ないですもん。
そんなわけで、じゃぁ、ムスリムと日本人が近いとこってどこ?
・・・ってことで、マンガの舞台は人種のるつぼアメリカ。
このマンガは、アメリカに留学している、日本人女性サトコが、サウジアラビア人の女性ナダの住む家にルームメイトとしてやってくるところから始まります。
アメリカ圏は、2001年の同時多発テロ以来、ムスリムのイメージは日本以上に悪い。同時多発テロの時には、なんの罪もないムスリムが襲われたりするなど、「偏見と憎悪」はいまだに続いてるそうです。
ぜんぜん余談ですが、同時多発テロの時ちょうどニューヨークに観光に行っていた自分としては、あの時のテレビのアルカイダの映像垂れ流しは結構なものでしたので、ターバン=怖いと完全に刷り込まれている人も未だにいるんでしょうね。
さて、この漫画では、あくまでも登場人物が若い女性ということで、ターバンではなく、目を出すだけの「ニカブ」やら、顔を出す「ヒジャブ」やら、とかくイスラム圏の人への「先入観」に縛られがちな文化について、(枕の跡を隠す時とか、着替えるのが面倒だからとか)状況によって使い分けていたりと、実際の若者の「肌感覚」で語られているのが、マンガというテイストにとても合っていて読みやすいです。
また、女子会では派手な格好をするものの、外では肌をさらさないムスリムの女性たちに対して、アメリカ的な思考で見る人だけでなく、ムスリムの女たちの「主張」も、「なるほどな」と思える新たな視点を見る人に与えてくれます。
欧米の考え方からすると、中東のムスリムの女性たちは、いろいろと制限されて「かわいそう」ということですが、それはそれなりに「理由」や「意義」があるという視点は(特にアメリカでは)軽んじられがち。
これは、いわゆる「日本人女性」の価値観が全部「男尊女卑」でできているわけではなかったのと似ています(女が男の後ろについて歩く→男が守るため、的な)。
なんでも、「アメリカナイズ」が正しいとされる視点と、スタイルを曲げないイスラム圏の視点と、第三者の視点としての日本人(読者)の視点など、さまざまな視点で描かれるので、学校の図書館に置いても良さそうな作品です。
もちろん、堅苦しい話抜きにして、家の中の女子会ではものすごくおしゃれする彼女たちの姿を描いたり、なかなか「メディアに出ない女たちの本当の姿・考え方」に触れられるのは新しい発見で、それをきちんとおもしろい4コマ漫画として描いているのが、この作品の魅力。
なにより、まだ若い留学生という視点で描いているので、登場人物が説教臭くない!
もちろん、アメリカに留学するムスリムは経済的に恵まれて、親も進歩的な人が多いからというのもありますが、だからこそ描ける、「かわいそう」じゃないムスリムの女性の姿は、刺激たっぷり(?)です。
何よりも、タイトルにあるように、あくまでも「イスラム教徒」の話ではなく、サトコとナダという二人の間に起きる日々の出来事や考えが中心のお話なので、国境や文化を超えた女の友情物語としても、必見の価値アリです!
コミックスでも4巻で完結しましたので、読みやすいのもいいですね。
視野を広げてほしい、中学生くらいのお子さんに読ませてもいいと思います。